冷たい熱帯魚

園子温監督・脚本の衝撃の問題作が、TOHOシネマズららぽーと磐田にやってきた。東京では1月下旬に公開されてその内容がセンセーションを呼んだ。「埼玉愛犬家殺人事件」をモデルにして、監督がそのほかの猟奇殺人事件もヒントにして物語を作った。おのれの欲望だけに忠実に生きている極悪非道な夫婦に巻き込まれた男が、抜け出せない闇に沈んでいく。スプラッター描写がすごいのだけど、人間の欲望をあからさまにして2時間半の上映時間に隙もない。この映画を見て少しでも笑えたら、たいしたもんだ。普段映画の点数をつけないわての採点は、満点だ。

社本(しゃもと)信行(吹越満)は、小さい熱帯魚屋を経営している。娘の美津子(梶原ひかり)は反抗期の真っ最中で、タバコを吸う後妻妙子(神楽坂恵)が大嫌いだ。社本は美津子の母が亡くなって3年後に妙子と結婚したので、それも娘の反抗の原因だった。その美津子がスーパーで万引きをする。すぐに両親が呼ばれる。店長室に入ると、ふてくされた娘と村田幸雄(でんでん)がいた。なぜか村田は美津子をかばい、警察沙汰にならない。

村田はアマゾンゴールドという大規模な熱帯魚店を経営しており、従業員も多く抱えていた。村田は美津子を従業員として雇うと申し出て、妙に親切にする。社本は先に帰されて、妙子は村田に本性を見抜かれる。ビジネスパートナーにならないかという村田の申し出を妙子は夫にすすめ、欲の深さを見せる。村田のペースに巻き込まれた社本は、1000万円のアマゾン原産の熱帯魚の養殖という事業への出資者吉田(諏訪太郎)に村田の事務所で会う。

悪知恵の働く村田は出資をためらう吉田を言いくるめて、お金を巻き上げる。そして、ドリンク剤を飲ませえて吉田を事務所で殺してしまう。びっくりしたのは社本で、死体の処理を手伝わさせられる。郊外の山の中の教会のような建物に死体を運び込み、村田とその妻愛子(黒沢あすか)は数種類の刃物で骨と肉に細分する。とてもその状況を見られない社本は、翌朝まで付き合う。骨をドラム缶で焼いて灰にして、肉は山中の川に捨てる。社本は村田と酒を飲んでいたと帰宅する。

村田の妻愛子は、顧問弁護士の筒井高康(渡辺哲)とも肉体関係を持っている。村田は社本の妻妙子を犯しており、社本も仲間になるしか道がない。吉田の知り合いが事務所に怒鳴り込んできた際は、村田たちの芝居に一役演じる。村田は気に入らない人間を殺すことを、「ボディを透明にする」と呼ぶ。社本が少しでもためらいを見せると、「お前は何事にも真剣に取り組んでいない」と非難する。

徐々に感化されていく社本は、おびえた表情から家族を守るために行動を起こす。最後に娘が、父に向かって「やっと死にやがったこのおやじ」と言い捨てる。この救われないエンディングが、作り手の割り切りのよさを示している。8月2日にはDVDが発売されるけど、その前に映画館で見て欲しい。



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