アゲイン   28年目の甲子園

重松清原作の同名小説を、大森寿美男監督・脚本で映画化した”マスターズ甲子園”をテーマにした作品だ。甲子園に出られるのは各地区で一つの高校だけだ。その夢に向かって高校球児は毎日きつい練習をしている。地方大会の決勝前日にある部員の不祥事で出場辞退した中年男性とその家族が、再生に向かっていく姿を野球を通して描いている。前半で明らかにされた問題がエンディングに向けて解決していくので、爽快な気分になれた。キャッチボールは気持ちの受け渡しでもあるという表現方法が効果的だと思う。新年早々に邦画の佳作に出会うことができた。

ある男性が年賀状を書いている。「一球入魂」と書かれているのを、娘が「一球人魂」とは質問する。その男性の娘戸沢美枝(波留)は大学生になって、マスターズ甲子園の事務局のメンバーになっていた。その美枝が46歳の元高校球児・坂町晴彦(中井貴一)を訪ねてくる。美枝の父親松川典夫は大震災の津波で亡くなっていて、自宅に残っていた27年分の未配達の年賀状があったことを知らせる。父のことを知りたい美枝は、坂町たちにマスターズ甲子園に出ないかと薦めに来たのだ。でも、未配達の年賀状には深い理由があった。

坂町は離婚して、一人娘の沙奈美(門脇麦)とは絶縁状態だ。新聞記者から総務に仕事が変わっていたけど、家族を顧みない父親だった。おまけに沙奈美は同級生と同棲しているという。娘から父親と思われていない坂町は、とりあえず美枝の頼みを受けて同級生を訪問する。最初には、同級生でピッチャーだった高橋(柳葉敏郎)のところに行く。ところが、高橋はあの不祥事がなければプロ野球選手になっていたと答える。それに対して、坂町は「お前なんかノンプロに行っても成功しなったからプロにはなれなかったのだ」と言いけんかをする。

坂町と高橋がマスターズ甲子園を目指すことに同意すると、仲間を増やすためにまわる。少年野球の監督をしている元キャッチャーの山下(木村仁)を引き入れる。彼の子供も野球をしているが、レギュラーには程遠い存在だった。野球部のOB会の会長柳田(西岡徳馬)も話に乗ってきて、地方予選の初戦に勝利を収める。そこから、美枝が不祥事を起こした男性の娘だったことがわかり、問題になる。

ここまでに解決すべき問題が列挙されている。その問題が野球を続けることで、一つ一つほぐれていく。元マネージャーの裕子(和久井映見)が真相を語るシーンは涙が出そうになった。全員が同じ目標に向かっていける幸せ、堂々と負けることができる幸せを味わう。それさえできれば、人生は再出発ができるとつくづく思った。エンディングで流れる浜田省吾の曲がすばらしい。鑑賞後、爽快な気分になれた。星四つ。

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