マエストロ!

さそうあきらの同名コミックスを、小林聖太郎監督が映画化した作品だ。脚本は奥寺佐渡子だ。一度解散した交響楽団が正体不明の指揮者の出現で再結成に向かって進んでいく物語だ。音楽家が主人公の映画では俳優は楽器の練習をする。その前提はクリアした上で、音の広がりをカメラワークで表現する画期的な手法を実現している。宇宙と融合する領域の音楽という表現が出てくるけど、まさにコンサートシーンはすばらしい空間表現だった。

地方にあるオーケストラは財政難で、それだけで食べていける楽団員はほとんどいない。地方自治体の援助を受けていたり、スポンサー企業がないと存続が難しい時代だ。関西に拠点をおくこのオーケストラも、財政難から解散して有能な演奏者は引きぬかれている。ヴァイオリンのコンサートマスターをやっていた香坂真一は、ヨーロッパのあるオーケストラから不採用の通知を受け取った。そして、楽団再結成の知らせを受ける。出かけて行くと廃工場が練習場で、工事現場の監督みたいな指揮者が待っていた。

練習段階で、指揮者の天道徹三郎(西田敏行)が楽団員を厳しく指導する。コンサートマスターの香坂真一(松坂桃李)には、「お前は何のために音楽をやっているのだ。父親の音を再現するためにやっているのか。そんなことならやめてしまえ。」と言う。フルートの橘あまね(miwa)をソリストに指名したときには、プロの奏者のプライドをぶち壊す。オーボエ奏者には、リードの不出来を指摘して一番いいやつを使えと命令する。定年で一旦引退したヴァイオリニストには、全員の前での演奏を強いる。

ほかにも無理難題をふっかけて、団員から総スカンを食らう。そのうちに、天道が詐欺師ではないかと噂が出始めて先行きに不安が出始める。コンサートホールの責任者・相馬(松重豊)に問い詰めると、昔香坂の父と演奏者と指揮者の関係だったことがわかる。このあたりからの展開がなかなか見応えがあった。香坂が病院の病室で演奏してみせるシーンあたりから、どんどんと引き込まれてしまった。スポンサーが降りてしまってから、みんなで立ち上がる段階がかなり省略されているけど、よしとしよう。

それよりも、指揮者が誰もいない練習場で棒を振っていると、団員がだんだん入ってくる演出がよかった。一番感動したのは、本番の演奏シーンのカメラワークと演奏者の思いをシンクロさせた場面だ。カメラをリモコンヘリで飛ばして、空中からオーケストラが見渡せる。音符が空気中を伝わっていくので見えるようなシーンだった。香坂が、「テンポが練習と全然違う。頼むから付いてきてくれ」と思う。演奏者の心情と音楽と映像が融合したシーンだった。ブラボー。

本番の音が練習のそれを全然違うと直感したけど、佐渡裕指揮のベルリン・ドイツ交響楽団だから当たり前だった。

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