イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

アカデミー賞8部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した作品だ。イギリスで50年間機密扱いにされた数学者が名誉を回復されたことから映画化した事実にもとづく作品だ。第二次大戦中にナチス・ドイツが開発した最高の暗号機エニグマを解読して、連合軍の勝利とコンピューター開発に貢献した天才数学者を描いている。天才にありがちな社会性のなさと戦争に勝つという大目標に向けて突き進む苛酷さ、そして孤独な人生を描いた傑作だと思う。時代が許さなかったとはいえ、あまりにも悲しい人生に涙が出てきた。

1939年ナチス・ドイツは快進撃を続けて、ヨーロッパに勢力を広げていく。イギリス本土にも爆撃機が飛来して、ロンドンの街が破壊される。アメリカからの補給船もUボートによって撃沈されて連合軍は状況を打開できない。そこで、M16が中心になって史上最強の暗号エニグマの解読チームが結成される。その中には、天才数学者のアラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)も含まれていた。子供の頃から数学には優れており、学校に授業がつまらない。ケンブリッジ大学のキングス・カレッジに進み、卒業後特別研究員になる。

1939年にイギリスがナチスドイツと戦争状態になると、暗号解読が必須になる。洋々な分野の精鋭が集められて、暗号解読のチームが結成される。ほかのメンバーはチームを組んで共同作業をするのに対して、アランだけは単独行動を取る。ドイツ軍の暗号は夜中の12時に新しいシステムに変更されて、朝の6時頃に軍事的指令が発信される。それを受け取ったイギリス軍が暗号解読にとりかかるけど、深夜までかかっても解読できない。それを繰り返してもなかなか解読できない。現状を打開するために、アランはチャーチル首相に手紙を送る。

首相の許可を得て、10万ポンドの資金を調達してアランは150×10の18乗通りの計算ができる大きなタンスのような装置を作る。昔のコンピューターはテープがぐるぐる回っていたけど、彼の作った装置でも何かがグルグルまわっている。人が足りなくなり、クロスワードパズルの天才ジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)がチームに加わる。ジョーンが緩衝材になって、チームに団結ができる。一ヶ月で結果を出す瀬戸際に追い込まれたときに、ひょんなことからエニグマ解読に成功する。それですぐに喜べるかと思ったら、簡単ではなかった。ドイツ軍の動きを察知して軍事行動を起こせば、暗号が解読されたと敵にばれてしまう。

敵に暗号を解読したのをばれないように、軍事行動を起こすケースとそうでないケースを区別しないといけなくなる。つまり、味方にも言えない秘密を抱え込むのだ。チーム内でも葛藤があり、上司に対しても葛藤がある。さらに、チーム内にソ連のスパイがいることがわかり、上層部が承知の上でチームに入れたことをアランは知ってしまう。変わり者のアランの理解者だったジョーンと婚約するけど、自分が同性愛者であることに耐えられず別れることになる。

ジョーンはアランが同性愛者でもいいと言うのだが、彼は普通の生活に戻れと別れを告げる。晩年は同性愛者として裁判所の命令で、ホルモン療法を受けて失意のうちに自殺した。戦争終了後にアメリカに行ったりしてコンピューターの基礎になるような業績も残しているけど、この映画では描かれていない。戦争終結を2年早めたという業績も、むくわれない最後だ。星5個。

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