私の男

桜庭一樹原作の同名小説を、熊切和嘉監督が映画化した作品だ。DVDで見た。二階堂ふみが中学生から大人の女性まで演じており、その怪演ぶりが縦横無尽に発揮されている。浅野忠信も藤竜也も彼女の添役になっているほどの、演技だった。内容もものすごいのだけど、それを演じられる女優がいるということもすごい。

奥尻島を津波が襲った地震で家族を失った腐野花(山田望叶)は、遠い親戚である淳悟(浅野忠信)が引き取って育てることになる。10歳の震災直後は子供だった花は6年後(二階堂ふみ)、中学3年になっていた。中学3年になると、女性としての一面と少女としての一面を併せ持つことになる。同級生と遊んでいると思ったら、大人の女性としての会話ができたりする。家族を突然の津波で失った喪失感は、並大抵の愛情では埋められない。

淳悟と男女の関係になったことを大塩(藤竜也)に知られてしまった花は、流氷の流れ着いている海岸に逃げていく。それはあたかも家族を失った海に帰りたいという願望も入っていたかもしれない。大塩があまりにも愚直すぎるのも原作の設定だろう。なぜ結論を急いだのだろうか。たぶん小さな街で自分だけが知ってしまった秘密を守ろうとしたのだろう。映画の冒頭で花が流氷の海からずぶ濡れになってあがってくるシーンとつながっている。

大塩が凍死体で発見されて葬儀が行われる。花も淳悟も神妙な顔つきで出席している。原因不明なので犯人探しも行われていない。その後、東京に出た二人は小さなボロ屋で生活を始める。淳悟はタクシー運転手として、花はOLになっている。淳悟が一人で自宅にいると、警官だった田岡(モロ師岡)が訪ねてきて大塩のことを問い詰めていく。かっとなった淳悟は田岡を殺してしまう。死体をどのように処分したのかわからない。

OLをしている花は尾崎(高良健吾)たちと飲み歩くようになって、尾崎を自宅に招くが淳悟が「お前では花の相手はできない」と追い払ってしまう。数カ月後だろうか、銀座の高級レストランで花とある男性がいるテーブルに淳悟がやってくる。どうやら、花はその男性と結婚するようだ。何か言い出そうとして淳悟だが、花の足が淳悟の又間に伸びて淳悟は沈黙する。

花は男に食いついたら絶対に離さない食虫植物のような女性だ。こんな女性と演じられる二階堂ふみはモンスターみたいな女優になりそうだ。彼女の演技を見るだけでも価値のある映画になっている。星4個。

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