ヴィンセントが教えてくれたこと

セオドア・メルフィが監督・製作・脚本を担当して作ったブルックリンの聖人を見つける物語だ。主人公の老人は酒とギャンブルと女にうつつをぬかし周囲の嫌われ者だが、隣に引っ越してきた少年の子守をするうちに次々と奇跡を起こしていく。それは普通の人間が見たらいかがわしい所業なのだが、痴呆の妻を毎週見舞っている憂さ晴らしなのだ。一旦脳卒中で倒れてリハビリで復活する様はまさにキリストのようだ。リハビリによって生まれ変わり、新しい人生を歩み始めることによって、周囲の人間を幸せにする奇跡の物語になっている。

ベッドがギシギシなっているので何をしているかと思った。ヴィンセント(ビル・マーレイ)の上にダカ(ナオミ・ワッツ)が乗っていて、なにの真っ最中だ。70歳くらいになっているのに元気な老人でダカは妊娠しているようだ。なんともうらやましいことなのだが、本人は偏屈で頑固ジジイなのだ。酒と競馬に身をくずし、貯金もない。そんな彼の隣にシングルマザーのマギーと息子オリバー(ジェイデン・リーベラー)が引っ越してくる。学校で制服を盗まれたオリバーはヴィンセントの家に入り、母の帰りを待つことになる。

マギーと電話で連絡をして、子守をするから金をよこせと話をまとめてしまう。病院で検査技師をしている母は残業が突然入ることもあり、ヴィンセントにオリバーを任せることになる。まずいじめっこに対抗するために、喧嘩の方法を伝授する。その後は、自分の趣味の競馬場に連れて行き馬券の買い方やオッズの計算方法などを教える。さらに、酒場に連れて行き社会勉強を体験させたり、ダカという夜の職業の存在も教える。

そんなふうにヴィンセントがなってしまったのは、養護老人ホームに入っている痴呆の妻の見舞いをずっと続けているからだった。いっしょに行ったオリバーは白衣を着て医者になりきって美しい老婦人に接しているのを見て、ヴィンの苦しみを知る。ヴィンは本当はすばらしい人なのではないかということを。オリバーの通う学校では自分なりの聖人を見つける課題が出される。オリバーは、ヴィンこそ自分の聖人ではないかと思いはじめる。

いじめっこと仲直りできて友人になった。学校に行くのも楽しい。母と父の親権争いは共同になってしまうけど、ヴィンの存在によってだんだん融和の方向に向かう。借金取りが自宅まで来たときに脳卒中で倒れてオリバーが発見して命を取り留める。それはまさしくヴィンの復活だろう。それと同時に痴呆の妻が亡くなり、ダカに自分の子供が生まれる。ヴィンは新しい父親になる自覚が全くないけど、オリバーの発表会で教えられる。

ヴィンの影響でオリバーの家族が復活して、自分も新しい家族を作ることができた。これがブルックリンの聖人の成し遂げた奇跡なのだ。星5個。

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