ドローン・オブ・ウォー

「ガタカ」のアンドリュー・ニコル監督が脚本も担当して、製作した映画だ。米国内で無人戦闘機を操縦する人間は、1万キロ離れた戦地とは全く違う環境で勤務している。ディスプレイに映る映像はまさにゲームのようで現実感がない。ましてやその基地がラスベガス郊外にあり、エアコンの効いた快適な環境にある。最近のニュースでも誤爆の問題がクローズアップされているけど、命の重さが違うのかと錯覚してしまう。

トミー・リーガン少佐(イーサン・ホーク)はF-16のパイロットとして活躍したスペシャリストだ。大きなGに耐えながら、敵機との対戦もあったり天候の変化も読み取る能力も必要だった。200回の出撃経験を持っており、もう退役してもいいくらいの功績を残している。上司のジョンズ中佐(ブルース・グリーンウッド)から説得されて、現在は無人戦闘機ドローンの空対地ミサイルヘルファイアの発射ボタンを押す仕事をしている。

中佐が新兵を前にして話をしている内容が、印象的だ。ドローンの操縦士としてスカウトされた君たちはゲームセンターで声を描けられたものもいる。でも、これはゲームではない。実際に敵のテロリストを殺すためにやっているのだ。そんなふうに演説している。その横をトミーが無表情で歩いて行く。ベガスのショーダンサーをしていた妻モリー(ジャニュアリー・ジョーンズ)との間には二人の子供もいるけど、夫婦仲はだんだんと冷えていく。

その原因は現実感のない任務にトミーが耐えられなくなって、悩みを一人で抱え込んでいたからだ。秘密の任務を家族にべらべらしゃべるわけにもいかないのだ。短い映画なのだけど、主人公の苦しみはよくわかる。女性兵士のスアレス(ゾーイ・クラヴィッツ)が助手として配属されると、また違った状況が生まれる。標的を見張っている最中に現地の男性が女性を犯すシーンを何回も目撃してしまう。女性が入ったことで、トミーは特にその鬼畜的行動が許せなくなる。

さらに、CIAが作戦の指揮を取るようになると、民間人が混ざっていても重要な標的を始末することを優先するようになる。民間人の誤爆はこういうふうにして起こされていたと思うと、愕然とした気持ちになった。トミーが酒におぼれていくのもわかる気がする。二人の子供を連れて別居した妻の元へ車を走らせるラストシーンが、この映画の救いになっている。それがなくても充分に秀作だと思うけど、安心した気分になった。

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