グラスホッパー

伊坂幸太郎の同名小説を生田斗真主演で映画化した作品だ。グラスホッパーとはトノサマバッタのことで大量に発生すると形態変化を起こして凶暴化する。日本でも古くはイナゴの大発生があった。アメリカのトウモロコシ畑がバッタの大群に襲われるシーンを映画でよく見る。それと同じことが日本一の人口密集地の渋谷のスクランブル交差点付近で起き、人間が凶暴化するという物語だ。恋人を合成麻薬の中毒者によって殺された主人公が殺し屋たちに巻き込まれていく様子を描いている。物語の筋がしっかりとしており、若干の説明的描写も気にならない。

ハロウィンの夜の渋谷のスクランブル交差点は、身動きできないほどお化けに仮装した人間が殺到する。渋谷の街全体がまるでバッタの大群に襲われているようだ。大きなSUVのハンドルを握る男が電話の指示で合成麻薬の錠剤を飲み込み、横断歩道に突っ込んでいく。多くの人間が轢き殺されて、その中に中学教師の鈴木(生田斗真)の恋人の百合子(波留)もいた。鈴木は学校を退職して途方に暮れる。事件現場に行くと、目の前に「本当の犯人は別にいる」というメモが落ちていた。その指示に従って、フロイラインという会社に潜入する。

その会社は、裏社会に君臨する寺原会長(石橋蓮司)と二代目の寺原Jr(金児憲史)の組織の一部だった。健康食品の販売が鈴木の仕事だが、簡単に売れない。中学時代の教え子(佐津川愛美)に話しかけられて、事務所に連れてきたことから事態が動き出す。直属の上司比与子(菜々緒)からその健康食品が中毒性を持ったやばい成分を含有していると打ち明けられて、逆らえなくなる。比与子と鈴木が同じ車で移動中に、寺原Jrが”押し屋”によって殺される。その押し屋の一人を尾行するように命令された鈴木は、裏社会のどまんなかに巻き込まれる。

Jrが殺されたことで会長は犯人探しに力を集中する。組織の頭をやっているなら、息子の復讐に没頭してはいけないが無理なことだった。押し屋の一人槿(あさがお:吉岡秀隆)の自宅を見つけたが、鈴木は比与子ら組織からスマホのGPSで追いかけられる。鯨(浅野忠信)は相手を自殺に追い込んで殺す。相手の目を見つめて自分の罪を思い出せと問いただし、首吊りロープや飛び降りなどの方法に追い込んでいく。そのためには組織の秘密の多くを知ることになる。また、蝉(山田涼介)はナイフを使って相手の首筋を狙う殺し屋で、仕事の手配は岩西(村上淳)が担当している。それぞれ、綺麗な仕事ぶりを見せてくれる。

でも鯨は多くを知りすぎたとして、組織は蝉に始末するように命令する。これが会長の二つ目のミスになる。押し屋たちはなぜ鯨と蝉が殺しあうことになるのを予想できたのか、わからない。鈴木は虫も殺せない優しい心の持ち主だったから、助かったのかもしれない。なにやら不思議な映画だった。敵の懐に入り込んで仕事を成し遂げるのは、ゴルゴ13みたいな腕の持ち主だ。よほど自信がないとできない芸当だと思う。星4個。

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