杉原千畝スギハラチウネ

スピルバーグの「シンドラーのリスト」(1993)と比べるのは酷だけど、この作品も充分に力作になっている。シンドラーはアカデミミー賞7部門(作品・監督・脚色など)獲得した傑作なので仕方がない。リトアニアでユダヤ人にビザを発給して命を救った杉原千畝のことは知っていたけど、彼一人の力ではなく多くの領事館職員やほかの日本人が関係していたのがわかってよかった。日本政府が彼の名誉を回復するのが2000年になってからだというのは、遅すぎる。勇気ある人々が世界を変えようとしたのだ。

杉原千畝(唐沢寿明)は英、露、独、仏語を話す優秀な外交官だ。満州国では北満鉄譲渡交渉で有利な条件を引き出す。それによってソ連から好まれざる人物に指定されていまい、外交官として入国できない。そのためにリトアニアの領事館に赴任する。リトアニアはドイツとソ連に挟まれた小国で、ポーランドの北側にある。ナチスがポーランドを併合したのは早い時期だった。ユダヤ人はドイツには逃げられないので、ソ連を経由して他の国に逃げるしかない。

ポーランド政府のスパイと知っていてペシュ(ポリス・シッツ)を運転手として雇い、うまく使いこなすのがすごい。日独伊三国同盟と独ソ不可侵条約で日本は安心して大東亜共栄圏を作ろうと、アジアに進出していく。でも、ドイツがソ連に開戦することを世界で一番早く知り、本国に報告していたのもすごいのだ。領事館の前に押しかけたユダヤ難民を前にして最初は知らん顔をしていたけど、だんだん助ける気持ちになっていくのが痛いほどわかった。

妻幸子(小雪)の献身的な強力もあって、杉原はビザの発給を決意する。1ヶ月間昼夜を問わず書き続けて、6000人もの人々を救う。領事館閉鎖してからはホテルや鉄道の駅でも判子を押し続ける。シベリア鉄道に乗れたユダヤ人はウラジオストクに到着する。そこでも、根井という領事代理や天草丸の添乗員が杉原に強力する。これはある意味奇跡的なことだと思う。軍部が主導権を握っている政府に逆らうようにして難民の命を救うのだ。

戦後になって助けられたユダヤ人が外務省を訪問するが、杉原千畝という外交官は存在しないと言われる。依願退職させられたのだ。それ以来、イスラエル政府が彼を表彰したのに知らん顔をする。2000年になってやっと名誉を回復する。日本政府のなんというお役所的態度なのだと思う。現代の日本では難民審査が大変に厳しい。いつまでたっても変わらないのだと思う。我々日本人も変わらないといけないとも思った。星5個。

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