トランスポーター3 アンリミテッド

ジェイソン・ステイサム主演の車を使った運び屋の活躍を描いたアクション映画第三弾だ。製作・脚本にリュック・ベッソン、監督はオリヴィエ・メガトンだ。わては1作目から見ているけど、緩急を描き分けた脚本に驚いた。主人公フランクが同乗者ヴァンレンティーナ(ナタリア・ルダコーワ)の正体を把握できない設定が、単なるカーアクション物でない味を出している。サスペンス的などきどき感もあるが、笑いどころもあって娯楽作品として完成されている。

アウディA8・6リットルW型12気筒DOHCクワトロを使ったカーアクションは、ミッチェル・ジュリーン担当のカースタントによって実写だという。車が家に突っ込んできたり、橋から湖に落ちたり、2台の大型トラックの隙間を片輪走行ですり抜ける。極めつけは、走っている列車の屋根に橋の上から車で飛び移る。そのほかにも、今回はマウンテンバイクでも、街中を走り抜ける。格闘シーンも服を脱ぎながら、そのワイシャツやネクタイを利用して戦う。

特殊効果に頼り過ぎないで、実写にこだわった映像作りは点数が高い。アウディA8に対抗してカーチェイスをするのは、ベンツのE550アバンギャルド5.5リットルDOHCV型8気筒あたりだと思う。AMGの可能性もあると思ったが、外観が普通のやつなので各メーカーのフラッグシップモデル同士の対決と構図がいい。

契約厳守・名前を聞かない・荷物を見ないという三つの原則を守って運び屋をしているフランクは、ある依頼を断りマルコム(デヴィッド・カンメノ)に仕事を譲る。ところが、そのマルコムが自分の家に車ごと突っ込んで来て、救急車で車から離れた瞬間に爆死する。次の瞬間、何者かに殴られて気絶し、目覚めたときには腕にブレスレットがはめられていた。マルコムが突っ込んできたとき、車に同乗していた赤毛の女性がはめていた車から離れると爆発するブレスレットと同じだった。

マルセイユ(フランス)・ミュンヘン(ドイツ)・ブタペスト(ハンガリー)・オデッサ(ウクライナ)と移動するのが、この映画の核心になっている。映画の冒頭で産業廃棄物を運搬している船で、何者かが侵入して貨物室が汚染される。その船がどこの海を航海しているのか、最初は地中海だと思っていた。ところが、映画が進むに連れてカスピ海だったことがわかる。ウクライナは地下資源も豊富だし、石油も出る。そして、東西交通の要所として戦略的に非常に重要な地点だ。

映画の冒頭でタルコニ警部(フランソワ・ベルレアン)とフランク(ジェイソン・ステイタム)が、波静かな入り江で釣りをしている。大物が掛かるが、警部に呼び出しの電話が掛かってきて魚を釣り上げることができない。そのシーンを象徴しているように、マルセイユの港では仕事中のマルコムが通関に手間取っていて事情がわからない。その後、仕事をフランクが引き継ぐことになるのだが、「赤い代物」の正体がわからないのでフランクも調子が出ない。

でも、「赤い代物」の正体が同乗者のヴァレンティーナであり、彼女がウクライナの環境大臣の娘だということがわかるとフランクの本領が発揮される。「荷物を見ない」という原則が破られて、事情が判明するとやっとフランクは本気になってジョンソン(ロバート・ネッパー)と対決する。最後に、また警部とフランクの釣りのシーンが出てきて、隠れていたヴァレンティーナが起きる。そして、なかなか獲物をゲットできない男たちに向かって、「おいしいレストランを知っているよ」というのが洒落ている。

本気のアクションの中にも、ユーモアを忘れない演出がフランス映画らしい。ヴァレンティーナとフランクの会話で、「あなたはゲイか」というせりふがある。女性のほうが現実的で、実利を取る姿勢が痛快だ。カーアクションや格闘シーンを楽しむのもいいし、男女の洒落た会話を楽しむのもいい。サービス精神に富んだ満足な娯楽作品だと思う。夏休みは、こういう映画で元気になろう。ゴロゴロ。



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