女が眠る時

ビートたけしが最近の邦画を「観客動員数だけで評価している」と批判していたので、さっそく見に行ってきた。ハビエル・マリアスの同名原作小説を日本を舞台にして製作されたものらしい。ウェイン・ワンが監督。スランプ中の作家がリゾートホテルで過ごす一週間で出会った歳の離れたカップルを観察して、小説を書き上げる物語だ。途中から小説の世界と現実が入り乱れてくるので、訳がわからなくなった。ラストで小説がヒットしたことが明かされるので、そこで現実に戻ることができた。

でも、これは観客に委ねられた解釈なので、どのように理解してもいいのだと思う。ということになると、もうなんだか訳がわからない映画だという感想もありえる。麦わら帽子、夜、嵐、台風、パソコンでの小説執筆などが現実と空想の境界線になっているのだ。そして、ビデオ撮影もおかしな使われ方になっている。最初、佐原(ビートたけし)は上書きすると言っておきながら、大切な映像はテープを保管していると矛盾点がある。しかも、何年も前からのテープを大切に保管しているという。

清水(西島秀俊)は妻綾(小山田サユリ)に指摘されて、プールサイドに座っている佐原と美樹(忽那汐里)のカップルに注目する。それは小説のヒントになればという期待感が込められている。しばらく話が進むともう小説のアドバイスはしないでくれと、綾に言う。つまりそこで、清水は小説の世界に入り込んでいるのだろう。綾の麦わら帽子が行方不明になるも、同じ理由からだろう。

夜寝付けなくて佐原と美樹の部屋をのぞきに行くことがあったかもしれないけど、彼らとの会話はもう小説の世界だと思う。リリー・フランキーが登場するシーンも会話がちょっとおかしい。ということで、台風が来ているのに食事に行くとか、美樹が清水の乗るタクシーに乗ってくるのも空想の世界だと思う。殺人事件は起きないし、美樹を殺す動機が佐原にしても清水にしても弱いのだ。仮に佐原が美樹の両親の親友だとしても、絶対に手放したくないのならもっと執着心を描くべきだろう。

さらに指摘するなら、清水が妻綾と激しく交わるシーンがある。でも、なぜか清水は美樹に魅せられていきだんだんと冷静でなくなる。そして、妻が会いに行っている小説家が年寄りではなくて若い男性ではないかと怒るシーンが出てきた。清水が妻から気持ちが離れて美樹に行くのなら、もっと何かのエピソードが必要だったと思う。

いまでも何がなんだかわからない内容だったという感じがするので、これから映画館に行く方ははっきりした結論を期待しない方がいいと思う。面白さは星4個だ。

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