この世界の片隅に

こうの史代の同名原作漫画を、片瀬須直監督がアニメ映画化した作品だ。「マイマイ新子と千年の魔法」も同じコンビだというが未見だ。広島県呉を舞台にして戦前から戦中・戦後の移り変わりを庶民の目から描いた傑作だと思う。呉は普通の田舎と違って軍港なので特殊な存在だけど、そこで繰り広げられる純朴な少女が経験する激しい戦争の体験を実感できる。70歳以下の戦後世代は是非映画館で見てほしい。

海苔の栽培をやっていたすず(のん)の実家は、戦争の足音が聞こえてくると埋め立てで廃業する。絵を描くのが好きでのんびりやのすずは、いかにも田舎の少女という感じだ。18歳になると海軍の軍港がある呉から縁談が来て、広島から嫁ぐ。すずの夫になった周作は、子供の頃出会ったすずを忘れられないで探していたというから一途な男性だ。

わての母親は84歳になる。まさに戦争中に女学校に通っていた経験者だ。田舎なので食べ物にこまることはなかったけど、砂地でさつまいもを作ったという。10km以上ある道を歩いて通ったというからのんびりした時代だった。そんな田舎でも、艦載機による空襲で同級生が亡くなっている。また、艦砲射撃の直撃を受けて防空壕の中にいたのに亡くなった人がいたという。

この映画に登場するすずは、姪っ子と空襲の後に不発弾の近くを通り姪っ子と自分の右手を亡くしてしまった。おばさんからは恨まれるけど、日本各地どこでも同じようなことがあったと思う。そんな身近な人間が亡くなっても、残されたものは生きていなかいといけない。さらに、この映画の舞台となる呉は戦艦大和を造船した軍港なので、米軍は徹底的に破壊した。そして、昭和20年8月6日には広島に原子爆弾が投下される。

呉から見ると入道雲みたいなきのこ雲に見える。しかも、爆風がすずたちの家まで吹いてくる。その惨状はご存知の通りだ。この主人公の性格がどこかのんびりしていて、描く絵がやさしい。日本の田舎の美しい風景を見ることができる。今でも日本全国都会みたいに開発されてしまった。この映画を見て、時間がゆっくり進んでいた日本の姿を再発見してみよう。星5個。

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