後妻業の女

黒川博行の原作小説を、大竹しのぶと豊川悦司主演で映画化した作品だ。実際に似たような犯罪を行ったモデルがいるのだけど、シリアスな物語にはしないでユーモアをたっぷりとまぶして笑える展開になっている。高齢の裕福な独身男性をターゲットに後妻におさまり、夫を死に追いやって財産をいただく。罪の意識がないような大竹しのぶの演技はまさに名人だろう。

結婚相談所を経営する柏木(豊川悦司)と、参加者の武内小夜子(大竹しのぶ)は裏でつながっておりグルだ。元大学教授の中瀬耕造(津川雅彦)と結婚した小夜子は、早くくたばるのを待っている。2年後意識不明になった耕造が亡くなると、朋美(尾野真千子)と尚子(長谷川京子)の娘二人がやってくる。小夜子は二人の娘の前に、遺言公正証書を示して遺産を全部相続すると宣言する。その言葉に仰天した朋美は同級生の弁護士に依頼して調べてもらう。

その結果、小夜子は高齢の裕福な独身男性の後妻に入り、遺産をまるごと手に入れることで生活しているとわかる。過去も調べると、それを仕事にしている後妻業の女だった。そのような生業を行ってきた女性は実在している。人間の命をなんとも思わないで、人を殺すのをためらいがない。大竹しのぶ演じる小夜子はまさに罪の意識がない。ふてぶてしいほどの度胸を持っている。そんな小夜子が悪行三昧を繰り返すのかと思ったら、そうでもない。

なぜ冷酷非道に見えないのか、それはたぶん大竹しのぶの演技だと思う。それと、監督の鶴橋康夫の演出なのだと思う。小夜子と対抗する二人の娘も今までに父のことをかまってこなかったと反省したりする。遺産をもらえなくても仕方がないのかもしれないとも思う。それでも、面白いのは朋美と小夜子が取っ組み合いの喧嘩をするシーンだ。なんでもこの喧嘩はまじになったという。

それと小夜子が笑福亭鶴瓶ふんする竿師に引っかかるから、面白い。遺言公正証書と、普通の遺言書の違いも映画の最後で理解できるのがいい。子供は親の遺産を当てにしてはいけないのだと思う。それでも、親の心情としては子供に少しでも残してやりたいと思うのだろう。小夜子と柏木は結局警察に捕まるのだと思う。ラストシーンでその二人が婚活パーティーをしている船の上にいるが、それは三途の川だと思う。悪行を重ねてきたら、そういう結果になるのだ。星4個。大竹しのぶの演技は満点です。

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