ぼくのおじさん

北杜夫原作の同名小説を、松田龍平主演で映画化した作品だ。北杜夫自身がモデルとなっているけど、わてもこの映画のモデルと似ている。甥っ子が二人いて、できの悪いおじさんとして君臨している。この映画のおじさんは大学で非常勤ながら哲学を教えており、無職ではない。でも収入は住民税が非課税くらいしかないだろう。それに対して、甥っ子はしっかりしておりおじさんの観察記録を書いて、作文コンクールで賞を取る。

一目惚れした女性を追いかけてハワイまで行ってしまい、コーヒー農園で働くのだからたいしたもんだ。おじさん(松田龍平)はハワイから日本に来た稲葉エリー(真木よう子)に一目惚れする。エリーさんはハワイに帰ってしまう。会うために懸賞のハワイ旅行を目指して学生や近所の子供たちまで動員するけど、当選しない。でも、兄夫婦の家に居候するおじさんの生態を作文にした雪男(大西利空)が、作文コンクールでハワイ旅行をゲットする。その思い込みがすごいので、甥っ子を連れてハワイに行く。

一方、現実のとらおじさんは、そんな行動力も決断力もない。頭の中で妄想して、心配して悩んでいる。ワンコと散歩をしている時だけは生き生きとしているけど、ほかの時間はどよどよんとしている。映画のおじさんは兄嫁に嫌味を言われてもへこたれない。でも、とらおじさんは簡単にへこたれて落ち込んでしまう。

ハワイのコーヒーはコナという品種だけど、販路が難しいのだ。エリーの農園も祖母が亡くなってしまったので、経営を背負うとしていた。そんな事情も知らないでハワイに来たおじさんと雪男をお客さんとして歓迎してくれる。無謀にもコーヒー農園の苦境を知ったおじさんは、手伝うと言い出すけどすぐに疲れて倒れる。ダメダメなおじさんは、まるでとらおじさんそのものだ。

でも、このおじさんは男気を見せてくれた。ハワイまで追いかけてきたお菓子屋の長男で恋敵に負けたとわかると、潔く応援するのだ。なかなかこんな格好いいセリフを言えるものではない。だらしないと言いながら、実はしっかりしているのだ。雪男の担任の先生(戸田恵梨香)が気にいるのは、もっともなことだと思った。とらおじさんとは相当の差がある。映画としては星3個。

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