降りてゆく生き方

ワークピア磐田で、武田鉄矢主演の「降りてゆく生き方」を見た。倉貴健二郎監督・脚本で製作された映画だ。劇場で公開せず、DVDも作らないでテレビ放送もする予定がないという。どういう映画なのか疑問に思っていたら、納得できた。これは地域おこしの実例を何百と取材して全国を回り、そのエピソードをつなぎ合わせて一つの物語にしたものだった。観客の対象としては、映画館で映画を見る人ではなく地域の活性化に取り組んでいる市民に見せたいのだ。だから、DVDも作らないしテレビ放送もしない。小さな市民ホールで地元の人々を集めて上映するのが、正しいと思った。

本山五十六(武田鉄矢)は団塊の世代で60歳を迎える。妻とは別居中で離婚するかもしれない。仕事ではアイアンファンドの幹村研一(渡辺裕之)社長と秘書の石原舞子(大谷允保)の元で、あおぞら市の限界集落の久高集落に派遣される。久高集落に目をつけたアイアンファンドは、無肥料無農薬の米作りをしている二宮常一(苅谷俊介)のブランド米に目をつけていた。その米を目玉にして一大レジャーランドを作り投資を呼び込もうというのだ。本山の役割は、久高地区の住民の委任状を集めることだった。

あおぞら市の市長権藤栄作(同名の新人)に面会すると、高速道路からの取り付け道路の拡幅工事に反対している商店街があると聞く。まず米作りの名人の田んぼ作業を手伝うことから始める。スーツ姿のまま水田に入るこだわりがいい。頑固者の二宮に気に入られるのは時間が相当かかる。一方商店街に足を運ぶと、シャッター通りになっていた。そして、道路拡張問題は20年以上前から賛成派と反対派に二分して、全然まとまっていない。

ある酒場に入ると三輪あゆ子(石田えり)が一人で酒を飲んでいて、女将さんだった。お客が全く来ないという。昔は造り酒屋の森酒造の主人が健在だったので、景気がよかったという。でも主人が亡くなってしまい、全くお客が来なくなった。森春子(沢田雅美)に会いにいくと、亡くなったのが大学の同級生だと知る。すっかり地元の人間に肩入れし始めた本山は、商店街の寄り合いにも出るようになる。久高地区のお嫁さん探しの田植えイベントを企画したり、アイディア満載だ。造り酒屋の息子は森太熊という名前で小学校の教師をしているが、学級崩壊で全然うまくいっていない。

その後の展開は映画を見て欲しい。無肥料無農薬のお米、小さな地方都市の造り酒屋、シャッター商店街、道路拡幅問題、針葉樹だけの森林の荒廃、熊が里に出てくる問題、これらは日本中どこにでもある。この映画を見ると、経済成長期の登っていく生き方ではなくて、逆の生き方(降りていく生き方)の実例が示されている。リンゴつくりの木村秋則氏、寺田本家の寺田啓佐氏、清水義晴氏、などなどの方々の名前を聞いて何をしたのかわかる人は見なくてもいい。わからないとらごろさんは、見てよかった。
降りてゆく生き方公式サイト





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